超極細の芯でも折れない、きれいに書ける!ぺんてるの技術を結集させたオレンズの開発ストーリー。

超極細の芯でも折れない、きれいに書ける!ぺんてるの技術を結集させたオレンズの開発ストーリー

常に新しい機能や技術、使い方の開発を続け、シャープペンシル市場を牽引してきたぺんてる。
かつて、製図用のシャープペンシルで採用されていた独自の技術を用いて、
市場の潜在的なニーズに応えることとなりました。
超極細の芯でも折れずにきれいに書けるその製品は、オレンズと名付けられ、瞬く間に市場を席巻!
これまでにない機能と使い方を備えたオレンズの
開発やマーケティングに関するエピソードを伺いました。

J.Y 商品開発本部 シャープ企画開発部 シャープ開発課 2003年入社 A.F 商品開発本部 シャープ企画開発部 シャープ開発課 1991年入社 K.M 国内営業本部 マーケティング推進部 筆記具・修正具グループ課 2006年入社
J.Y 商品開発本部 シャープ企画開発部 シャープ開発課 2003年入社 A.F 商品開発本部 シャープ企画開発部 シャープ開発課 1991年入社 K.M 国内営業本部 マーケティング推進部 筆記具・修正具グループ課 2006年入社

“細くきれいな文字を書きたい――新たなニーズに応える時期が来た!

F 社員 この企画がスタートした当時のシャープペンシルの市場は、付加価値として高機能を持たせた製品が活況でした。

M 社員 シャープペンシルのメインユーザーである学生の動向を探っていったのですが、ニーズの核心をつかむことができないまま数年が過ぎていきました。

Y 社員 確か、モニター調査を行ったんですよね。

M 社員 モニター調査で潜在的なニーズが見えてきたんです。学生がノートを取る時のニーズとして、「細かい文字や細い線できれいにノートを仕上げたい」というものがありました。そこで、このニーズに応えるべく、当社の過去の技術を応用した製品を開発することになったのです。当社は一般ユーザー向けのシャープペンシルに加えて、プロユースの製図用シャープペンシルを多く開発・製造してきました。その中でも芯径0.2という細い芯で極細な筆記ができる“PG2”という製図用のシャープペンがあり(現在は製造販売終了)、開発サイドからは「この技術を応用、復活できないか」という提案を受けており、製図用ではない一般向けのシャープペンとして企画がスタートしました。

F 社員 そして、初代オレンズの開発が立ち上がったんですよね。2013年の春頃にプロジェクトが立ち上がり、私は製品本体の設計を担当しました。

Y 社員 まだ製品名も決まっていない頃ですね。私は替芯の開発担当として、配合設計と工程条件の設計に携わりました。

M 社員 私はオレンズのマーケティング担当としては3人目になります。先代の二人が企画・立案から発売までをしてくれました。オレンズの開発当時は、苦労が多かったと聞いています。

F 社員 当時、シャープ開発課は替芯と製品本体と開発する部署が分かれていて、それぞれで研究開発を行っていました。そのため、替芯開発を手がけるY さんと情報共有をしながら開発に取り組みました。

M 社員 オレンズに応用された技術は“パイプスライド”というもので、この技術を用いることで芯径0.2という極細の芯でも折れずにスムーズに書くことができるんですよね。

F 社員 昔の“PG2”の部品図を引っ張り出してきて、「この通りに部品を作ればいいかな」と気軽に構えていたのですが、そう簡単にはいきませんでした。芯が細いため、本体から芯を繰り出す構造の検討にかなりの時間を要しました。

Y 社員 一般的な0.5のシャープペンの開発との違いはありましたか?

F 社員 そうですね。本体内にある芯を繰り出すチャックという部品があります。基本的な作りは従来と同じですが、極細の芯を正確に繰り出すため、より高い精度で設計しています。何とかチャックの設計を終えたのですが、今度はクリップの設計に試行錯誤しました。クリップが非常に細く、「これではクリップの感触が固すぎて製品にはならないのでは」という意見が出たくらいです。デザイン性も考慮する必要があるので、プロダクトデザイナーと何度もやりとりを重ねました。

“オレンズの機構に合わせて、芯径0.2のSTEIN替芯を開発

M 社員 オレンズの開発は、製品本体と替芯の両者が合わさって実現しました。Y さんは、替芯の開発に当たって苦労したことはありますか。

Y 社員 強度と書き味のバランスの取り方ですね。日常的な筆記に適した“なめらかさ”をどう実現するか。この点に最も注力しました。

F 社員 通常、シャープペンシルは芯をある程度出して書きますが、オレンズの場合は芯を出さずに筆記します。書き続けていると芯が減るのと同時に徐々にパイプが後退し、常にパイプが芯を覆った状態になっています。

Y 社員 つまり、オレンズは芯単体で書くような構造ではなく、書く時には必ず金属製のパイプが紙にあたります。金属製の部品が紙にあたると、どうしても引っかかるような感触を抱いてしまうため、この“引っかかり感”をどう打ち消すかが替芯開発の肝になりました。

M 社員 製品本体を開発するF さんとの連携が上手に取れたとか。書き心地の良さは、どのようにクリアしていったのですか。

Y 社員 試作段階から連携を図って、引っかかることなく心地よい書き味を得られるように、材料の配合を細かく調整していきました。さらに社内モニターに協力してもらい、「より多くのユーザーが書きやすい」と感じる芯に近づけていきました。また、オレンズの芯は非常に繊細です。たとえば硬度Bのように芯体が軟らかい場合、軟らかすぎると脆くなって製品を落としたときに折れるといった不具合が考えられます。品質基準を満たすよう、設計には注意を払いました。

F 社員 量産試作も時間がかかりましたよね。

Y 社員 ビーカースケールから実機スケールに移行する時ですね。量産を想定して実機で作ると、どうしても製造機械によるクセが出てしまうんですね。例えば温度調整一つとっても、試作とは異なってくる。この調整が非常に難しく、量産試作だけで丸3か月かかりました。試作品の数は、ビーカースケールと実機スケール合わせて100以上になりました。

M 社員 コンセプトは、“超極細芯でも不思議なほど芯が折れないシャープペン”。超極細の芯径0.2のシャープペンというこれまでにない特性を持ったオレンズは、多くのユーザーに受け入れられました。

F 社員 2014年2月にオレンズをリリース。M さんがオレンズのマーケティングを引き継いだのは、さらに数か月経ってからですよね。

M 社員 2014年の5月ですから、発売から3か月後ですね。オレンズが軌道に乗った頃に先輩から引き継ぎました。ただ、当時の私は営業部門からマーケティング部門に異動して日が浅く、経験において先輩には遠く及びません。プレッシャーもありましたが、社内的にも期待の高い製品であることを実感していましたし、すぐ後ろで上司や先輩が私を支えてくれている。自分なりに精いっぱい頑張ろうと決意しました。

Y 社員 マーケティングにあたって、最も大変だったことは?

M 社員 オレンズは通常のシャープペンシルとは違う使い方をしますから、どのようにわかりやすく伝えていくか。この点が最も苦労した点ですね。パイプスライドという機構を使うことで、0.2の芯でも折れない。つまり、“超極細芯、パイプスライド、折れない”という3つの情報を伝える方法を検討していきました。

F 社員 「芯を出さないで書く」というオレンズの使い方を浸透させるのが大変だったんですよね。

M 社員 最初はパッケージに記していたのですが、ユーザーはパッケージをすぐに捨ててしまうんですね。そこで、注意喚起を促すために「必ず裏を見て下さい」と印刷したシールをつけました。それでも、使い方に気づかないユーザーもいる。結局、本体にもシールを貼ることになりました。

Y 社員 オレンズを購入したユーザーの意見を聞いて、初めてわかったことですね。

M 社員 年間の売上げ計画を3か月で達成したため、工場に「至急、増産してほしい」と依頼をかけました。

増産体制を整え、ラインナップを拡充。ぺんてるを代表する新ブランドの誕生。

Y 社員 替芯開発担当として納得のいくものを開発できたし、実際にオレンズに芯を入れて書いてみると非常になめらかで、書き心地がいい。「これはいけるかもしれない」という手応えはありましたが、ここまで反響が大きいとは思ってもみませんでした。

M 社員 会社としても「オレンズを当社を代表する新たなブランドとして育てていこう」という方針を打ち出しました。マーケティング担当の私は3年後までを見据えたロードマップを作成。現在は、このロードマップに則ってマーケティングを展開しています。

Y 社員 ラインナップを増やすことになったんですね。

M 社員 まずは、オレンズ最大の特徴である“芯径0.2”の周知に注力しました。そのため芯径0.3の発売はその1年後とし、さらにオレンズに関するユーザー調査の中で握ったときの安定感への要望があったので、ラバーグリップを装着したタイプを追加発売しました。当初は学生を想定していましたが、「芯を出さない」という機構にギミック的なおもしろさを感じる社会人のユーザーも多いことがわかり、新たな市場も見えてきました。

F 社員 ラバーグリップ仕様や海外向仕様、メタルグリップ仕様など、複数のプロジェクトが立ち上がりました。

M 社員 どのようにラインナップを拡充するとしても、オレンズの基本的な機能は同じです。最大の特徴である「0.2という超極細の芯径」、「芯を出さないで書くという使い方」の訴求を引き続き行っていき、シャープペンシルの新しい使い方としてユーザーに定着させたいと考えています。また、安心感も訴求ポイントの一つ。ユーザーに、オレンズの正しい使い方とその安心感を、実際に使用し体感していただくため、「芯が折れたら返金キャンペーン」を行いました。

F 社員 マーケティングのM さんが策定したロードマップを開発側の私たちも共有できたので、オレンズのプロジェクトメンバー全員が気持ちを一つにして開発に取り組めていると思います。今後もオレンズ独自の機構を生かしたものづくりに取り組み、主力の製品にしていきたいですね。

Y 社員 最近、ある材料メーカーと打ち合わせをした際に「私も使っているんですよ」と言ってくれて。「とても書き心地が良いです」というコメントが何よりも嬉しかったですね。社会人のユーザーも多く、市場に浸透していることを実感しました。

F 社員 メディアでも取り上げられていますよね。私がこれまで担当した製品の中でも、抜群の売れ行きを見せている。私的なことで恐縮ですが、テレビ番組で紹介されているのを見ながら妻が「お父さんがつくったのよ」と息子に伝えたら、「父ちゃん、すごいね」と。こうした瞬間にやりがいを感じます。オレンズが当社の新たな柱となり、さらに売れ行きを伸ばしていけたら嬉しいですね。

M 社員 そもそも当社はシャープペンシルと替芯において、文具業界のリーディングカンパニーとも言うべき存在です。たとえば世界で初めて樹脂製の替芯を開発したのも、世界で初めてノック式のシャープペンを打ち出したのも、当社です。

Y 社員 樹脂を使うことで、0.9や0.5などの細い芯径の替芯が開発され、シャープペン本体のまったく新しい機構が誕生しました。

M 社員 樹脂製の細い替芯が浸透し、ノック式のシャープペンシルが今、当たり前のように使われているように、いつかオレンズの「芯を出さない使い方」も当たり前になるはず。そのためにも、シャープペンシルのマーケティング担当として、引き続き「芯を出さないで書く」という使い方や、「超極細」という特徴を啓蒙し、オレンズを主力の製品に育てていきたいですね。

プロジェクトストーリー02